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アイソレーションタンク(フローティングタンク)体験談-錯覚する脳(5)

C君の場合

まず、はじめに俗っぽい言い方をすると、非常にリラックスできて気持ちよかったです。まさに、リラクゼーションマシンでした。全体的な感想として、感覚遮断の度合いが四段階に分かれて進行したように感じました。

・第一段階 : 全ての感覚がはっきりしている状態(もちろん、視覚は除く)
この段階では、まだアイソレーションタンクに入って液体の上に浮かんでいるという感じがするだけでした。また、液体に浮くという感覚に慣れていないため、壁に体をぶつけたり、首が痛くなったりしました。もちろん、視覚は全くといっていいほどありませんでした。しかし、聴覚は体の音がはっきり聞こえる感じでした。まばたきの音や、筋肉や骨のきしむ音が聞こえました。体がずれているのか、顎のきしむ音ばかり聞こえたのが印象的でした。

・第二段階 : 体の感覚が徐々になくなっていく状態
この段階では、液体に浮く事に体が慣れ、非常にリラックスできました。また、心拍数が増加しているのがわかりました。空間を把握する能力は低下していましたが、まだ触覚がはっきりしていたため、液体に浮かんでいるという感覚があり、イメージとしては、すごく広い海の上に一人ぽつんと浮かんで漂っているような感覚でした。

・第三段階 : 触覚が一部を残してなくなった状態
この段階になると、液体に浸かっている部分と液体から出ている部分との差を意識するようになりました。いや、その差以外は意識できなくなったと言った方が適切かもしれません。液体に入っている部分は、触覚がほとんどなくなっていました。Aさん、Bさんの報告にもあったように、かだと液体との境界が全くわからなくなりました。

・第四段階 : 触覚すらなくなった状態(いわゆる悟り? 無我の境地?)
ここまで来ると、第三段階で述べた差すら認識できなくなりました。完全に触覚がなくなり、心音も聞こえなくなり(気にならなくなり)、呼吸すら全く意識していませんでした。完全に自分が液体に溶け込んでしまったような感じです。自分という意識(自己意識)が全くないかのような状態でした。意識(覚醒)はかなりクリアな状態だったので、寝ていたのではないと思います。これがいわゆる悟りの状態なのかと思いました。明らかに日常とは違う、味わった事のない独特の体験だったうえ、とても気持ちよかったので、これが味わえるんだったらヨガとか禅の修行でもしてみようかと思ったくらいでした。

・幻覚、幻聴に関して
幻覚も幻聴も、特に起こりませんでした。しかし、外からの刺激がほとんど無くなって、頭がクリアになったせいか、記憶が鮮明に甦るような感じがありました。今日、アイソレーションタンクに入る前にあった友達の姿や声、していたゲームの映像や音楽、それい以前の記憶などがかなりクリアに思い出せました。あたかも現在体験しているかのようでした。普段はかなり使っているはずの視覚や聴覚が急に無くなったのを補償するために、記憶の中から視覚情報や音声情報を取りだし、再生したのが幻覚・幻聴なのではないと思いました。

・その他(頑張って科学的に表現すると)
今回の実験を通して、以下のような印象を受けました。
人間は外部からの情報処理のために、脳のかなりの部分を使っている。
情報処理に使われなくなった脳の一部は、他の仕事をしようとする。それが幻覚・幻聴や不思議な感覚に結びついているのではないか。
タンク体験とは、感覚のホメオスタシス(恒常性の維持)と錯覚の賜物だ。
あまりにも感覚的な体験なので、科学的に分析しようとしても、これ以上の記号的表現は上手く出来ません。

C君は一回のフローティングで無我の境地に達したのではないかと、自覚するレベルまで至ったようです。さて、いよいよ次は前野教授の体験談です。

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