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アイソレーションタンクと感覚遮断研究の歴史(6)

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さて、このリリー博士のアイソレーションタンク(隔離タンク)はかなり有名になり、多くの人が実験に利用しました。利用者の中には文化人類学者のグレゴリー・ベイトソン、ノーベル賞受賞(1965年度)物理学者のR・ファインマンなどがいます。ファインマンは、その自叙伝『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(岩波書店刊)の中で、その経験を詳しく書いています。

ファインマンはもともと幻覚というものに異常なほど強い関心を持っていました。一時は、幻覚を体験したいばかりに麻薬を使ってみようかと思ったこともあるといいます。そうした人物だから、ある日、偶然のきっかけから、リリーに隔離タンクを試してみないかと誘われたとき、喜んでそれに応じました。

ファインマンは、アイソレーションタンクを十数回試しました。毎回二時間半ぐらいタンクの中に入っていました。3回目のときにインドのグルが教える体外離脱の方法として、鼻を通って出入りする自分の呼吸に精神を集中せよという教えがあると聞いたので、それをタンクの中で実行するしました。これにより、肉体の中の「自我」を意識によって少しずつずらしていくことに成功し、四回目でついに自我を身体の外に出すことに成功しました。自我というのは、要するに認識主体の事です。認識主体が体の外に出て、自分の肉体を外側から見るようになったのである。つまり、体外離脱に成功したのです。

「それからというもの、僕はアイソレーションタンクに入るたびに幻覚を見ることができるようになった。それだけでなく、しだいしだいに遠くまで『自我』を引き離すことが出来るようになった。 ~ 中略 ~ あげくに僕は部屋の外に出てそのあたりをうろつき、かなり離れたずっと以前見た事件が起こった場所へ行ってみたりすることもできた。」『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(岩波書店刊)

本格的な体外離脱ですが、ファインマン本人は体外離脱ではなく、幻覚だと考えていたようです。

そして、ファインマンはやがて、自在に幻覚を見ることができるようになります。

「はじめの頃は、それ幻覚が現れた、というので興奮するものだから、かえってせっかくの幻覚が中断されたり、はっと目覚めてしまったりすることがあったが、その段階を過ぎると気を楽にもてるようになり、長時間幻覚を見ることができるようになった」『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(岩波書店刊)
やがてこういう幻覚を見ようと思うと、それを見ることができるようになる。要するに、こういうものを見たいと思うと、それを見ることができたのである。ということは、幻覚は脳が作り出したものだということを意味するだろう。事実、ファインマンはそう考えたのだが、リリーは必ずしもそうは考えませんでした。
というのは、リリーは、あまりにも特異な体験をしたからです。

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