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アイソレーションタンクと感覚遮断研究の歴史(9)

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最後に立花隆氏のアイソレーションタンク(フローティングタンク)の体験談を「臨死体験(下)」(文春文庫)から抜粋してまとめてみます。

前にちょっとふれたことだが、かつて私(立花隆)は、ジョン・C・リリーのアイソレーションタンクと同じタンクに入ったことがある。 それは1981年4月、このタンクがはじめて日本に輸入されたときのことである。「週刊文春」のグラビアページの企画で、それを体験してみてくれと頼まれたのである。そのときの記事を引用してみると、次のようになる。 「幅と高さが約1.2メートル、奥行き約2.4メートルのタンクが、現在アメリカで脚光を浴びている。1954年に心理学者ジョン・C・リリー博士が開発、五年前から商品化されていたが、昨年全米で公開された映画『アルタード・ステーツ』で紹介されて以来、爆発的なブームを呼び、現在二十カ所あるタンク・センターも、今年中には倍増しそうな勢いだという。 問題のタンクの中には二つの空気調節口があり、二十五センチの深さに硫酸マグネシウムの水溶液が張ってある。内部温度は気温・水温ともにほぼ体温の36.5度前後(※実際の水温は約34度です)に保たれている。タンクに入ってフタを閉じれば、音も光もなく、仰向けにプッカリと浮いているだけ。しだいに肉体感覚が失われ、意識だけが宇宙遊泳を始め、幻覚体験を持つ人もいるらしい。約1時間で肉体疲労と精神不安を解消、集中力が増すという新健康法なのである。 もっかポール・ニューマン夫妻が愛用。スポーツ選手やビジネスマンに人気があり、ジョン・レノンも私有していたとか。そのタンクがついに日本に上陸した」 という説明とともに、タンクの写真が大きくのっている。そして、私とニュース・キャスターの田丸美寿々さんの体験記が談話の形でのっている。以下、私のその時の談話である。 「覚醒している状態と眠りの状態のちょうど中間にいる感じかな。しかし次第に意識が消えていくプロセスが(夢と違って)欠けている。眠りに入るまでのプロセスを意識しながら味わうという感じだね。 フタを閉めた瞬間に身体がゆるやかなスロープをすべり落ちてゆくみたいで、1センチでも身体を動かすと数メートルも動いた感じになる。そのうちに安定してきて、手足が重くなったようになる。 肉体感覚はありましたよ。いくら温度が同じでも水と空気では密度が違うからね。ただ肉体を伝わってくる音、たとえばツバを飲みこむ音や呼吸の音がとても大きく響く。手でお腹に触れてみたりすると、非常に新鮮な感じでしたね。 一時間は短く感じたな。一時間半くらいは入っていたかった。いつも意識が小さくグルグルと円を描いているとすると、意識が大きくゆったりとまわるみたいで、時間感覚も変わってくる。 かつてストレス学説を唱えたセリエ博士が、常に耳栓と目かくしを携帯していたのは有名だ。外界からのあらゆる刺激をストレスと考えれば、アイソレーションタンクは彼のいう”無ストレス状態”に完璧に近いわけだ。”無ストレス状態”がたいていの病気の治療に有効だということはすでに報告されている。 今の気分はスッキリしているが、今夜書く原稿の出来いかんで効果のほどがわかるかな」

~ 中略 ~

日常的な世界においては、意識の座も、感覚的主体(知覚)の座も、肉体の中にある。意識と知覚と肉体は一つに統合されている。それがタンクの中ではバラバラなのである。そして、じっとしていると、知覚も肉体も消失していき、意識は限りなく純粋意識に近づいていく。そういう状況の中で、これはもしかしたら一種の体外離脱なのではないかと思った。いわゆる体外離脱のように、自分の肉体を外から眺めるというプロセスはないが、自我は肉体から離脱しているのである。 体験者に、体外離脱したときの自分はどういう存在であったかとたずねると、ほとんどの体験者が、そのとき自分に姿や形はなく、ただの意識の点と化していたと答える(なんらかの形を持っていたと答える人も少数はいる)。彼らがいう、意識の点と化した自分というのはまさしくこういう状態だろうと思ったのである。意識だけで存在しているという自分が、そのとき少しもおかしくなかった。

このように立花隆氏は、体外離脱にかなり近いところまで行き、意識的に体外離脱してみようと努力したようです。この後の話は「ホロトピック・セラピー」に移るので、アイソレーションタンクについては以上の通りです。

 

次回からは、別の書籍に書かれているアイソレーションタンク体験についてまとめたいと思います。

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