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アイソレーションタンク(フローティングタンク)体験談-錯覚する脳(3)

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「錯覚する脳」(ちくま文庫)前野隆司著からの抜粋です。

A君の場合

視覚について
アイソレーションタンク内は完全な暗闇だったと思います。アイソレーションタンクに入って数分後、意識しないと、まぶたを閉じているのか開けているのかを判断できなくなりました。これは、完全な暗闇であるため、まぶたを開けていても閉じていても見えるもの(暗闇と違い薄暗い光帯のようなもの)が同じだったためだと思います。

聴覚について
アイソレーションタンクに入っている間中、いつも自分の体内の音が聞こえてきました。体内の音というのは、例えば心臓の脈打つ音、息を吸いのどや肺に空気が入る音、胃が動く音やまぶたが動く音です。日常ほとんど意識していない音が、非常に大きく感じられたのに驚きました。

触覚について
やはり、最も遮断されにくい感覚は触覚でした。液につかっている部分とそうでない部分では感じ方に差がある事を意識してしまい、完全な触覚遮断は起こりませんでした。特にアイソレーションタンクに入ったばかりの時期には、何度か壁にぶつかり、触覚感を感じてしまいました。ただし、何も触れない状態になると、自分の体の形状がどのようになっているかの認識が多少あやふやになりました。例えば、指先の場所が大まかにしかわからなくなりました。もし、手が切断されているとしたら、同じような感じなのではないかと思いました。

その他
今回の実験で最も驚いたのは、一時間半という時間が非常に短く感じられた事です。特に、アイソレーションタンクに入ってから二十分ほど経ち、アイソレーションタンクに慣れてからは非常に早かったです。ただし、前記のとおり、まぶたの開閉の判断がほとんどできなかったため、もしかしたら寝てしまっていたのかもしれません。ただし、終了の音楽がなった際に、「起きた」という感覚はなかったため、おそらく寝てはいなかったと思います。この時間感覚のズレは、外部からの刺激がなくなると体内時計(実際に存在するというよりも概念的なものだと考えてください)も動かなくなるためなのではないかと思います。すなわち、時間の感覚も外部の刺激に付随した受動的なものだと考えることができます。例えば、現象としては逆ですが、何かに脇目もふらず集中しているときは、時間の流れははやく感じます。これと同じようなものではないかと思います。

 ちょっとアイソレーションタンクの入り方に問題があったかも知れませんね。現在フロートセンターでは、アイソレーションタンクに入った直後の波が収まるまでは両手を広げて両側の壁を押して体を支えてもらうようにしています。最初の波で体があちらこちらにぶつかると、そのことが気になってフローティングに集中できないようです。
 また、触覚が気になる場合には呼吸に集中してもらうようにアドバイスをしています。あまり細かな指導はしたくないのですが、せっかくの体験がよりいっそう効果的となるように、ほんの少しアドバイスをしていきたいと思っています。

B君の体験に続きます。

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