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アイソレーションタンク(フローティングタンク)体験談-錯覚する脳(6)

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最後に著者である慶応義塾大学大学院教授の前野隆司氏の体験と考察を何度かに分けて取り上げたいと思います。

私の場合

三人の体験を順に見ていくと、A君よりもB君、B君よりもC君の方が、興味深い体験をしているように見える。なにしろ、C君にいたっては、いわゆる悟りあるいは無我の境地に達したのではないか、と自覚するレベルにまで至っていたというのだから羨ましい。

前述のように、A君~C君にはタンクを一回ずつ体験してもらったが、私だけは五回体験した。 まず、触覚や平衡感覚。 タンクのオーナーによれば、視覚遮断して浮いた瞬間にぐるぐるまわる感じがする人が多いという話しだったが、私も、浮いたばかりの時には自分の体がゆっくりと回転する感じや前進する感じが頻繁に感じられた。B君も同じ事を言っている。

これは、速度や各速度の初期感覚が維持されるためだと考えれば物理的に妥当だ。 つまり、タンクの中で、人が、最初にある角速度で回転している、という知覚をすると、他にも何も感覚入力がないため、無重力空間での運動と同じく、その角速度でずっと回っているような感じが維持されるのだろう。角運動量保存の法則が脳の中にモデル化されているというわけだ。もちろん真っ暗なので、初期角速度が正確に推定されているわけではないらしく、実際の角速度よりも大きな速度でぐるぐる回っているような感じがする事もあったし、逆の場合もあった。日常的には、自分の体の回転の角速度の変化やその初期値は、視覚によっても取得され補正されているのだが、タンク内では視覚情報がないため、トンネルのカーナビと同じく、角速度センサのみによって角速度が計画されざるを得ないというわけだ。そして、人の感覚のずれも、トンネル内のカーナビの暴走と同じ、というわけだ。

さあ、その後が本番だ。しかし、私の場合は、期待したほど体性感覚が遮断されなかったことがショックだった。 一方、私以外の三人は、多かれ少なかれ、触覚がなくなったかのような感覚に浸ったと報告している。

これらの結果からわかることは、触覚の感じ方には個人差があるということだ。私たちは、自分が感じる感覚のクオリアは他人と同じだと思っているが、実はかなり異なるのかも知れない。

考えてみれば記憶力や思考力には個人差がある。国語力や数学力にも、統率力や協調性にも個人差がある。あらゆる能力に個人差があるのだから、感覚性クオリアの感じ方にも個人差があるのはむしろ当然だろう。しかし、うまく測る手段がこれまで十分に開発されていなかったために、暗黙裡に感覚の個人差はさほど大きくないと誤認されてきたのではないだろうか。

続く

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