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「第三の脳」~自我を作る皮膚~

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「第三の脳」傳田光洋著朝日出版社刊にアイソレーションタンクの話が出てきますので紹介したいと思います。

皮膚とは何か

本書の考察の中心になるのは人間の皮膚です。成人の皮膚はたたみ約一畳(1.6平方メートル)の面積があり、重さは約三キログラム。重そうな脳が約1.4キログラム、肝臓がせいぜい2キログラムですから、ずいぶん大きな臓器です。

第三章◎皮膚は第三の脳である

自我をつくる皮膚

 さて、皮膚は第三の脳である、と宣言しました。では皮膚がなくなるとどうなるか。言うまでもないことですが、こんな実験はできません。皮膚は体内の海を護るバリアです。その三分の一が失われただけで、ヒトは死んでしまいます。動物実験でも同様。脳なしカエルはしばらく生きていますが、皮なしカエルは生かしておくのが難しそうですし、ダメージが大きすぎてまともな生理状態の観察は不可能でしょう。
 しかし、「皮膚感覚」をある程度遮断する実験なら、過去に試みられたことがあります。1950年代、アイソレーション・タンクという装置をj・C・リリー博士が考案したのです。これはすべての外的刺激を遮断して瞑想にふけるための装置です。
タンクは防音処置が施され、照明はなく、呼吸装置だけがあります。内部は皮膚表面温度と同じ34度の硫酸マグネシウムの濃い水溶液で満たされ、はだかで入った人はふわりと浮いた状態になる。この装置の中では視覚、聴覚刺激が遮断される他、皮膚感覚、重力などの体性感覚(筋肉、骨などが受容する感覚)も極端に少なくなります。
 もともと優れた脳の研究者であったリリー博士は、その装置の中で自らの意識が肉体を離脱することを感じました。そこまでならいいのですが、さらに離脱した意識が異次元の理性と対話を始めたと記述しています。(「サイエンティスト」平川出版)こいうことを言い出されると、ちょっと私の理解の範疇を超えてしまいます。アイソレーション・タンクを用いてもっと客観的にその状況を記述した記録を探すと、二つ、信頼の置ける体験談がありました。「ご冗談でしょファインマンさん」(岩波書店)のノーベル物理学賞受賞者R・ファインマン博士、そして「臨死体験」(文藝春秋)の立花隆氏です。
 ファインマン博士も「自我」が身体からずれ、やがて浮遊したように感じたと記述しています。「自我」という言葉の意味も厳密にはあいまいです。意識の中心とでも言うべきものでしょうか。しかしファインマン博士の場合、それは幻覚であると断言しています。ただ、このような幻覚は、アイソレーション・タンクの中でしか体験できなかったとも記述しています。
立花氏の場合には、ずるりと身体の表面から自我がずれた。ゆで卵の殻と中身を想定し、中身が自我だとすると、本来殻にくっついている自我が、ずる、と殻の中で回転したそうです。
 いずれも主観であり、そのとき何が起きていたのか、客観的観測データなどはありません。ただ優れた科学的知識と分析思考能力の持ち主である2人が、類似の感覚を体験してたのは非常に興味深いことです。立花氏はいみじくもその「解析」のなかで「自我の形成には体性感覚が重要な役割を果たしているらしい」と書いておられます。
 普通、自分がいまどこにいて、どういう状態であるか、考えなくてもわかります。目を閉じて耳を塞げば、ちょっと不安になる。そのまま移動させられたら、どこにいるかわからなくなる。ただし、自分の姿勢やまわりの温度、湿度はわかる。そしてそれを認識している自分という存在もわかる。しかしそれには「姿勢」を保つための骨や筋肉が感じている感覚、そして皮膚感覚が必要らしい。アイソレーション・タンクの中に浮いているとそれらの感覚もほとんどなくなってしまう。すると、あれこれ思考している「自分」が漂いだしてしまうようなのです。

まさにその通りで、皮膚感覚などの体性感覚が体の位置を私たちに認識させ、自分がここにいることを自覚させるのです。タンクに入り、体性感覚がなくなっていき「自分」が漂う感覚を体験してもらいたいです。

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